秋田さきがけ新報 2002年8月27日掲載

県内初、全国でも先駆的 工種ごとに専門業者へ分離発注
CM方式で公共事業 コストを縮減 透明性も確保


 工種ごとに専門業者へ分離発注するCM(コンストラクション・マネジメント)方式が、六郷町で障害者福祉施設の新築工事に導入される。公共事業における建築部門への導入は県内初で、全国でも先駆的な試み。元請け業者に一括発注する従来の方式と違い、入札に参加する業者が多くなって談合が成立しにくい状況が生まれる上、コスト縮減にもつながるなど、公共事業の新たな発注方式として注目される。

 施設は鉄筋コンクリート平屋建てで、延べ床面積約1700平方メートル。身体障害者の授産・デイサービス施設と知的障害者の更生施設が一体となった複合施設。今年3月から国の打診を受けていた町が導入に踏み切った。

 今回は国のモデル事業でもあり、工事発注者の町を支援するCMマネジャーには、民間の建築工事で多くの実績を持つ秋田市の小野建築研究所(小野泰太郎社長)が国から委託された。

 本体工事、防水、左官・タイル、内装、電気設備、機械設備など工種を16としたほか、予定価格についても町側と協議した上で工種ごとに設定。地元を中心とした計101社による指名競争入札を実施した。総工費は3億7000万円で、完成は来年2月。

 同研究所の試算では、一括発注した場合は約4億8200万円かかるのに対し、分離発注するCMは流通面などの無駄を省けるため約24%、1億円余りコストが縮減できる。CMマネジャーは、完成までに品質やコストなど工程を総合的に管理するが、そのマネジメント料は6%。さらに予備費2%を合わせた8%を差し引いても、効果の大きさが分かる。

 小野社長は「CM方式は契約書作成が多岐にわたり、管理の手間もかかるが、事業の透明性は増し、談合は難しくなるはず。納税者である住民のコスト意識も高まると思う」と話す。

 単なる下請けに甘んじていた専門業者にとってもメリットはある。今回落札した地元の内装業者は「施主と直接やりとりできる安心感がある。(CMを)自らの力で受注できるチャンスととらえたい」と語る。発注者と直接向き合うことで、仕事への責任やプライドが生まれ、技術力向上も期待できるという。

 一方、町側は「完成した建物を見極めるまで、CMの効果は分からない」としながらも、コスト縮減を歓迎。坂本茂弘町長は「業者同士の責任分担をどうするかが一番の課題。現場でうまく連携して工事を進めてほしい」と話している。

 国土交通省建設振興課は「今後すべての公共事業にCM方式を導入するわけではなく、あくまでも新たな選択肢の一つ」と説明した上で、「建設システムが変化する中、全国に先んじて取組むことは有意義」と期待を寄せている。