![]() 最近、森に対する関心が地球環境の保全への叫びとともに高まってきた。国内でも、林業家や建築家を中心に、森から家作りをしようとする試みが全国的な広がりを見せている。N.P.O.法人「緑の列島ネットワーク」などがその代表例である。私のような建築と林業に関わっている者にとってはまさに我が意を得たり。でも現実的には、そうたやすいことではない。木の伐採、搬出、賃引き…どれをとっても大変だ。しかし、そこに一歩踏み込んでいかないと解決にならないだろう。 それを成し遂げた人がいる。わたしの古くからの親戚、加藤周一氏だ。彼の家は代々の林家で、庄内地域では有数の篤林家でもある。頑なに林業にこだわりつづけた結果が成し得たことだろう。
一方で、住宅の品確法のようなユーザー保護をうたった法律が次々と打ち出された。品確法の成立は、住宅の性能表示、紛争処理、瑕疵担保といったユーザーを守ることを目的としている。裏を返せば、真剣に住まいを作っている者にとってこれほど屈辱的なことはない。
かつて家作りは、施主や大工さんが一緒に山に入り、山の木を見て家をイメージして必要な材だけを伐採して作りあげたものだった。しかし、今のユーザーは、木に対する知識があっても、現実に森の木をみることはまずない。まして自分の家に使用される木がどこで生産されているかなど、知るよしもない。従って、木に対して鉄やコンクリートといった無機材料と同じ感覚でしかみれない。
節があってはダメ、木目はこう、多少の曲がりもダメ…。これでは木を供給する側にとっては大変だ。 よく耳にする話で、スーパーで売られている野菜などの生鮮食品の例がある。パックに合わせた姿、形、大きさなど細かな条件が農家に課され、規格から外れた野菜は商品価値が下がるとして捨てられてしまう。なんと無駄なことをしていると思うだろう。消費者にとっては、多少姿、形がどうであれ、食材として大きな問題ではない。それよりも安く提供されるほうがありがたい。流通業者の都合で作るのは、本末転倒ではないか。要は作り手と食する人が相互に結果オーライであれば良いのである。
そのためにも、山林の手入れを怠るわけにはいかない。藪をかきわけて山にはいるのでは夢も希望もわかないだろう。青々とした下草が茂った杉林が、見る者に自然の悠久の営みを感じさせ、木が自然素材であることを改めて実感させる。五十年、百年住宅はそんなところから生まれるのだ。その土地の木を使用し、木の個性に合わせた住まい作りこそ、風土に合致した耐久性のある健康的な住宅といえるだろう。 法律や規制とは別の次元で真の住まいとは何かを考えるときなのかもしれない。
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