四月に入ると木々の新芽がほころび、緑が彩る季節を迎える。この時期の森には活気がある。

 大敵である蜂の活動も鈍く、さほど気にならない。見るだけで不愉快な蛇もまだ冬眠から覚めていない。

 しかし、6月に入るとたまに蛇に出くわすことがある。爬虫類特有のどこを見ているのかわからない、白く光る目。長い舌をペロペロと出す様子は、さすがに気味が悪い。


 春一番に咲いたカタクリの花
 地上に生息している動物は、人間をはじめほとんどが足で歩いているというのに、蛇は這って進む。この異様な姿にはどうしてもなじめない。蛇にしてみれば、不幸なことかもしれないが。

 今の季節は、そんなことを気にせず、藪や草わらをどんどん踏みこんでいける。

 梅雨時や真夏も大変な時期だ。山に入った途端に、蚊の大群に襲われ、顔が変形するくらいにやられる。

 蜂の活動が活発になる、9月頃も油断はできない。かつて、スズメバチに襲われ、亡くなった人がいた。大きな蜂を見つけたら、まずは彼らの住処を見つけ、近づかないように気をつけなければならない。特にスズメバチは、古い切り株や地中近くに巣を作るので厄介だ。

 やはり、山に適した季節は春先。


 竹林を下から眺める
 昨年、手入れした杉林は、藪が取り除かれ、シダ類が大きく葉を広げている。遠くから見ると、まるで緑のじゅうたんを敷きつめているみたいだ。まさに森林浴。杉の木には下草のシダ類がよく似合う。整然と直線的な杉の木立は、曲線的なシダ類が対極的に融合するのだろう。

 シダ類が多いと、林全体が湿潤な状態にあることから、蚊が発生しやすい。しかし、蚊が多いのは、良い山の証明であると古くからいわれている。

 確かに山の手入れは大変だが、山は手をかければかけるほど、素直に応えてくれる。ハイテク化された現代社会で、自然を相手にしていると、忘れかけていた本能が寄り戻される気がする。

 祖先に感謝しながら、今年も頑張る。


 曽祖父が植林した杉林

2001.4.23