いま建設業界はリスクという問題を抱えていて、建設業界の一番大きなリスクというのは倒産のリスクだろうと思います。株式市場の株価を見れば、本来であればすでに倒産してもおかしくないという数字になっているわけです。

 地方のゼネコンも、非常に厳しい状況に置かれています。工事中に倒産した場合、いったい誰がこのリスクを負うのかが大問題です。実際に私も設計監理をやっているときに経験がありますが、とんでもなく金がかかってしまいます。途中で倒産されると、お客さんはすでに3分の2の支払いを済ませているけれども、下請けの人たちの手元には届いていない。当然仕事の継続はできないので、サッシから足場から全部外して持っていって、躯体しか残らないということになります。もう一度元に戻すには倍ぐらいの工事費がかかります。

 倒産した場合に果たしてその後のアフターメンテナンスがいったいどうなるのかということもあります。もし倒産したら全部有償になります。いろいろな保険があるといっても、会社がなくなりますから、意味が失われる。いくら保証書を書かせても、紙切れになってしまうのです。

 発注者のリスクというのは、イコール私たちのリスクにもなり、当然そのリスクを回避するためにあらゆる手段を講じる必要があります。発注段階において危惧のある企業については、銀行の資金繰りあたりまで内々に調査します。そこまでやらなければ、発注者のリスクはカバーできないと思います。

 こうした業界とゼネコンの状況を考えると、専門工事業者は意外に力が強いところがあります。非常に厳しい環境の中にありますが、なんといっても自分たちが手を加えたわけですから、その分だけ力強く、全員が倒産することも稀なのは、技術を持っている強みだと思います。その意味で、これからは専門業者の育成と同時に、こういう形の発注をすることが非常に望ましい形ではないかと考えるのです。