次に、CMの仕組みについてです。

 私たちの事務所は現在13名で、CM事業部5名と設計部に分かれてやっています。なぜ分けたかというと、従来のように設計した人間がそのままCMの現場に入ると、どうしても馴れ合いや自分の頭で済ましてしまうことがあり、これが非常に危険だと感じているからです。

 従来の方式では、発注者から設計事務所に業務委託され、設計図ができて、それからゼネコン数社から見積りをとり、競争入札もしくは見積り合わせをするという手順で進めています。

 これがCM方式の場合には、工程監理や仕事と仕事のすき間だとかいろいろなことがたくさんあり、工程の調整から図面の表示の仕方について、従来の設計図のあり方とはまったく異なります。設計部で書いたものをCM事業部で図面をチェックして、それから発注するという体制を、CM方式ではとっています。

 従来のように、設計事務所が設計図を用意していても、現場でゼネコンのほうで施工図を書いてきちっと仕上げていただけるという関係がありましたが、そのままの思考でCM方式に入ると、とんでもない結果になってしまいます。従ってCM方式では、発注区分からディテールに関して、現場に行ってもあまり手を煩わせないで、微調整で済むような設計図を書かなければいけないわけです。このために、組織的に明確に分けたのです。

 ガイドラインの中でも、理想的な形としてCMのマネジメントというのは、設計事務所、建築会社から独立したほうがいいとうたわれています。現実の問題としては、少し無理があることも事実ですが、それでも組織的にはきちっと分けるほうがいいだろうと思います。

 設計ができて、それから専門業者の選定に当たります。小さい建物の場合は、私たちは市内の専門業者を無作為に指名していきます。当然CMについての考え方、システムをある程度わかっている方々です。住宅で大体20職種ぐらいに分離されることになると思います。それを平均的に4社から5社指名していきます。

 民間の仕事で、企業や発注者が一番気がかりなのは、談合です。どうすれば談合を防げるのかを重要なテーマにして、私たちも進めています。20職種ならば大体5社、5列になりますが、1時間単位で現場説明会を行っています。指名された方々の間で、だれが入っているか知られないように工夫をします。それで5社を指名して、見積りを提出していただきます。

 見積りは、ただ安ければいいということではない視点で見ています。企業には企業のノウハウがたくさんあって、設計事務所以上に詳しくいろいろなノウハウを持っている場合、たとえば「設計図はこうだけれども、あなたのほうだったらこういう形で変えたら、さらにコストが下がるし、この方法のほうがランニングコスト、イニシャルもいいんじゃないか」という提案があればそれを受けて、私たちの設備設計に相談するなりして、それでよければ積極的に採用していくという形で、業者を決めています。

 決めるときに、私たちが単独で決めるのは非常に不透明ですので、発注者の方には見積書の原本をすべて出しています。1職種5社から見積りをとりますが、詳細な項目に渡って見積書が出てきます。その原本を発注者の方に、総括表もつけてすべて出しますので、どの企業がどういう形で努力しているかというのがすべてわかってきます。たとえば、建具1本の値段もすべて公正に、わかりやすくしています。

 その後、発注者と協議して、どの業者と価格交渉するかを決めます。予算的にまだもう少し足りないということであれば、私たちのほうで精査して、ある業者がもう少し下がりそうだと判断すれば、交渉し、価格を決めていきます。それでも不足が生じた場合は、お客様に予算の追加を依頼するか、設計変更で下げていくなどを行って、予定どおりの価格を守るように進めています。このように明らかにする姿勢を示すと、業者にも快諾していただけます。

 こうした交渉は従来とまったく違います。いままではゼネコンの価格交渉は企業に利益のためにやっていましたが、私たちの交渉は発注者に対するサービスです。これは大きい違いだと思います。いままでは、ただピンハネされたという感覚しかなかったわけですけれども、CM方式のマネジメントで価格交渉するということは、すべて発注者の方に返っていくわけですから、自分たちはお客様にサービスをしたんだということを実感できるのです。

 工事に入ると、マネジメントの中で、計画から完成までの工程管理、文書管理、原価管理、品質管理、安全管理という管理を、すべて私たちで行います。大きい建物になると、大体2人が現場に常駐して行います。

 支払いの手順は、工事が終わった段階で業者に自分のところの自主検査表を私のところに出していただきます。そうすると、現場の私たちの担当の者がそれをさらにチェックして、完成を見届けてから、担当者が工事終了の旨の説明書を出して、発注者に対してお金を支払って下さいという形で請求書を出します。すると大体翌月には現金で専門業者に支払われるようになっています。したがって、CMの場合には、原則的には完成後1ヶ月で全部現金払いとなっています。従来の場合、皆さんほとんど手形で支払いを受けてきましたが、CM方式の場合は、基本的には全部現金で支払われていくようにしています。こうした方式はこれから建設産業を育てていくためには、最も大事なところではないかと思います。

 そういうシステムの中で建物が完成して、竣工式になるわけですが、竣工式も基本的には全員参加でやっています。起工式とかいろいろなセレモニーもだれかが負担するではなくて、全員で負担するようにしています。

 発注者の方に対する支払いは、契約が終わった段階で、工程表に基づいて、支払い管理表を提出しています。支払先の口座番号を全部書き入れて、いつ、このぐらいの金額の請求書が来ますという管理表を出して、お客さんはそれに基づいて支払っていくのです。支払いの手間が多少かかりますけれども、コストを考えれば大したことではないということです。