CM方式の基本的な考え方ですが、建築というのは基本的にはスクラムワークだと心得るべきだと思います。設計者、専門業者、発注者、それぞれが対等な立場で仕事をする。民間で建物を建てるということは、施主が人生に目鼻のついた人、もしくはこれから成長が考えられる企業であり、言ってみれば、成功者が建物を建てるわけですけれども、そうした場合、現場にもっと熱気が必要ではないかと思います。

 従来の元請、下請という構造の中では、どうも現場が白けている感じに見えます。建物をつくるというのはお祭りみたいなものであって、地域の方々がみんなで力を合わせてお祭りのように家をつくっていくものと私は考えています。こうした熱気というのは、建築の現場に非常に大切であり、現場に取り戻したい活気だと思います。職人にも自分の仕事に誇りを持ってもらいたいという気持ちから、CM方式を立ち上げた次第です。

 いま現在までに、CM方式で41件手がけましたが、クレームはまったくありません。私もかつて住宅産業を経験していますけれども、住宅産業は「クレーム産業」とも言われるほど、クレームが多々発生します。クレーム発生の原因は何かと言えば、基本的には発注者と受注者側との希薄な関係であると思います。

 私もかつて設計課長の職にありましたが、営業マンが仕事をとってくるときは契約が優先して、発注者とのコミュニケーションがほとんどない状態なのです。こうした希薄な関係では、ちょっとしたミスであっても、大きなクレームになってしまいます。また実際に工事がはじまれば、職人が建物をつくるわけですから、ミスや間違い、勘違いが当然あります。したがって常にクレームの要因があるのですが、人間関係さえしっかりしていれば、多少のミスは許容されることが多いというのが私の感想です。

 このような建設とは一見無関係のような精神的部分が、いまの建設産業にはなくなってしまったのではないかと思います。この部分を無視して、ただ契約優先、建てればいいという姿勢では、少しのミスも存外に大きな問題になるのです。CM方式は、そういうクレームは大きく減らすことができると考えます。

 私たちは設計事務所ですから、実際の仕事よりも設計に関する実体験をいいますと、いわばまったくの素人であるお客さんに図面を何回も説明して、私がお客さんに「ここどうなっていましたかね」と聞いて、お客さんのほうが図面を広げて説明できる状況、その程度になることをおおよその目鼻にして、はじめて業者に発注を始めています。このことを適当にすると、後で「私はそうは思ってはいませんでした」ということが発生しやすいのです。

 たとえば私たちは、夜遅くまでお客さんと打ち合わせをしますけれども、半分は設計の打ち合わせをして、半分はほとんど雑談で過ごしています。4時間打ち合わせをするとすれば、2時間は設計で、あとの2時間は雑談という時間配分でやっています。その2時間は、お客さんとのコミュニケーションに費やすのです。

 本当にそのご家族と親密な関係になって、終わってからもたびたび顔を出すということもあります。仕事を通じて親戚以上のお付き合いをして人間関係が広がっていくのが、建築のおもしろさではないかと思ってもいます。

 みんなで共同作業で建築するということが、CMの一番の基本であろうと思います。