次に、価格の透明化の問題です。常々、建設業界の価格が非常にわかりにくいと思っていました。たとえば、一億円という工事を発注したときに、各専門業者は実際にどの程度の単価になるかというと、3〜4割ぐらいをカットされて、各工種ごとに振り分けられていると思います。こうしたことが誰にもわからなければ、いままでは問題がなかったのです。

 しかし、公共事業の発注者である町長とか役職員が現場に行って、実際にそこで働いている職人と話をして、はじめて実情を知ることになります。驚きを感じる発注者もあると思います。そうなると、発注者にとって建築コストというのは一体どうなっているんだという疑問が残ります。一億円の建物が、本当のところは5000万円ぐらいでできるのではないか、という価格に対する不信感が蓄積されていきます。

 住民や納税者から無駄な公共事業ではないかといわれるのは、公共事業、特に価格に対する不透明性が大きな一因ではないかと思います。

 今後、価格の透明化は免れないところだと考えます。民間企業ならば株主などに対しての説明責任、公共事業であれば、納税者などに対する説明責任が求められるのです。

 先ほど少し触れました、技能後継者の育成ということ、分離発注で直接専門工事業者に発注することによって、いままで下請でやっていた皆さんが、いままでよりは高値で受注できるとすれば、工事発注の経済的な効果が高まるであろうし、専門業者の皆さんは非常に勇気づけられます。これならば自分たちももっと人を増やして頑張れる、もしくは待遇も改善できるようになるのではないかと思います。

 また、CM方式で感じるのは、民間工事の場合にお客様から感謝されること、それが直接伝わるということが特徴ということです。CM方式では、全社集まって契約調印式を行い、1人1人自己紹介して、また業者や施主からもあいさつしてもらいます。そのとき、お客様が必ず「皆様方のおかげで私の建物ができます」と言われます。こういう言葉は、従来方式の建設業界にはなかったことです。

 実際に専門業者も1人1人あいさつしますが、お客さんが見かけると、必ずみんなで「ご苦労さん」と声をかけようということが自然に出てきます。やはり顔が見える仕事というのは、職人においては非常に大事なことであるという証明だと思います。