スキームとしては、CM事業部で発注段階からやっていきます。発注業務というのは、業者選考基準のアドバイス、支援、業種の区分割や業者選考、そういう一連の発注業務作業の支援です。それから現場に入り、文書管理から品質管理、安全管理、原価管理などを、CM事業部で進める。そして、設計は当然設計部の担当ですから、2つの部署の共同で進むことになります。今まで建設会社がやっていた役割を私たちが全て担ってやっていくということです。大きな違いは、やはり発注者の立場に立って、発注者の利益を守るということで、対外的には中立を守っていくという点です。

 工種区分としては、杭打ち工事、躯体工事、鉄骨、防水、タイル、左官、金属、建具、シャッター、木製建具、塗装、内装、家具、パーティション、厨房、外構、電気設備、給排水と大体17の区分になります。この区分それぞれを発注していくわけですが、業者の選考基準があり、それが1つの課題になりそうです。

 公共事業では、参入業者の信用度、信頼性というものが問われます。そのための基準として経営審査というものがあり、これを受けているかどうかを問うのです。しかしそうした基準だけでは、非常に限られた職種になっており、経営審査を受けていない、内装工事や建具工事だとか、こういう職種の方々をどのような形で拾い上げていくのか、そしてどのような基準で選定していくのかということが、これからの課題になると思います。

 先日、町長と建設課長とともに打ち合わせをしましたが、その際、入札要綱を細かく見てみました。町長の話では、文章的には多少あいまいなところもあり、結審を受けていない業者を指名参加させることも弾力的運用で対応できるのではないかとおっしゃられていました。いずれにしても、CMの分離発注における今後の問題点であると思います。

 結審を受けていない業者の体制がどの程度なのか、たとえば、社員の教育とか、会社の決算の書類や社内体制、アフターメンテナンス体制などの基本的な部分にいささかの不安を感じることもあります。しかし、CM方式の場合には、これらをクリアしている必要があります。CMへの参加を機会に、こうした業界の方々と勉強会をしたいと希望しています。会社の経営内容を、第三者が見ても納得できる資料に整えておく必要があるのです。どんなに腕がよくても、社会的に責任の負える企業でないと公共事業には参加できないということをお話しなければと考えています。

 これらの問題をクリアして、地場産業を支えている職人的専門業者の皆さんが、新しいビジネスチャンスとしての公共事業に参入できるというものを示せれば、本来の意味で公共事業が本当に生きてくると思います。

 今回のマネジメント技術を活用した公共事業の導入の目的とその考え方ですが、分離発注となれば、従来のモラルや考え方を変えていく必要があります。最初に触れましたが、今日の建設業、公共事業の横並び的な体質をなくすことがひとつの大きな目的になるだろうと思います。公平な競争の中で発注や仕事が進められるような仕組みを、ぜひ私なりにつくっていきたいと思っています。

 それから、部外者からの圧力というものが、確実に設計事務所をやっているとたくさんあります。私たちは設計事務所ですから関係ないと排除していますが、今後CM方式でとなれば、発注者、すなわち行政の立場に立って発注支援をすることになるわけですから、当然、私たちにも圧力が多々あるのではないかと想像しています。しかしそうしたことを整理するのは、そう難しいことではないと思います。

 たとえば、現場説明の際に、部外者からの過度な営業行為というのは、全部発注者に報告しますと、文書で明確にすることもひとつの手だてとなります。現実に、CMの現場説明で、お客さんの前で「今日の現場説明以降は営業しないでください」とはっきり言います。これが公共事業の場合には、より厳格に、そういう行為は発注者に報告するということを明確にすること、こうしたことがCMに対しての信頼性を高めていくし、ひいては公共事業に対する信頼性が高まっていくんだろうと思います。

 納税者に対する説明責任も重要です。今後、公共事業に対しての、もしくは税金がどう使われていくのかということに対しての納税者の関心は、非常に高くなってくると思います。

 地方自治体では現在もたくさんの公共事業を進めていますが、恐らく町長さんは工事の内容を説明できないだろうと思います。予定価格を公表して、落札すれば、あとは一切お任せという状態にあるのではないかと想像されますが、それは責任の回避であって、発注者に対しての説明に重大な欠落があると思います。発注プロセスを透明化して、どこの業者がどういう形で決まったのか、中身の詳細についても明らかにすることが不可欠だと思います。

 民間の場合には、先ほど触れましたように、私たちは見積書の原本をすべて発注者に提出して、発注者はどの業者がどういう単価で工事に参加したのか全部わかるようにしています。そこまで透明化していかなければ、本当の意味で、建設のプロジェクトに対する発注者の理解は得られないと考えます。

 こうした手続きを経ることが、公共事業の場合であれば納税者、企業の場合は株主、こういう方々に対しての説明責任を示す姿勢になるのではないかと考えております。これから建築の場合、もっと全部オープンにするということが特に必要なのではないかと思います。

 したがって、私たちは、基本的には住民に対してもすべて情報を開示するという方法で対処したいと思っています。ただ、企業には、その企業の機密がありますから、どの程度とか兼ね合いの問題がありますが、可能な限り透明性を高めていきたいと考えます。