今後の展開を私なりに考えてみます。

 ゼネコンの方々が私たちの事務所に来られていろいろな話をされます。ゼネコンの皆さんに、私たちは決してゼネコンを否定するわけではないこと、ただ、現況で、ゼネコン自身も自分たちに欠けているところはないかきちっと総括しないといけないと申し上げています。

 仕事をしていくうえで、躯体工事がありますけれども、たとえば鉄筋コンクリートの躯体をやるときに、型枠と鉄筋とコンクリートを分離できるかというと、これはなかなか難しいことでして、実際に躯体が膨れたときは、責任範囲が非常に不明確になります。私たちは躯体は、従来のゼネコンが担う仕事ではなかろうかと思っています。

 実際、秋田のある工事では、建設会社が一括でやる予定でしたが、発注者がゼネコンは価格的に信用できない。今回は、CM方式で希望されたので、そのゼネコンには躯体だけを分担しました。私たちもこれからモデル調査をする際、鉄筋コンクリート建物の基礎部分は地元のゼネコンの分野と考えて、仕事をしていただくことを考えています。

 建設会社とはいったい何かと考えたとき、電気屋でも内装屋でも塗装屋でもなく、本来やるべき仕事は躯体工事であり、土工事、躯体工事、これが本来の建設会社の仕事だと思います。私がこの業界に入った頃は、建設会社は躯体に関して直轄扱っていました。たとえば大工の型枠の棟梁という方々が、直轄の社員と同じような待遇で、仕事の規模に応じて自分で人の手配をしていたのです。ほかに、足場だとか、プレハブの現場事務所なども、以前は建設会社が仮設資材や資材倉庫を全部持っており、それを仮に5回転用することで損料を落としていました。6回目あたりからは全部含み益になるので、資材倉庫で人を抱えて、きれいに掃除して油を塗って、丁寧に何回も転用していました。

 それが高度成長期に仕事が急激に増えて、外注したほうが効率がいいと判断されたのでしょう。いまでは建設会社に棟梁と呼ばれる方々はほとんどいなくなり、足場だけを担う仮設屋さんという仕事ができあがったのです。

 CMの場合も、足場関係はそうした仮設の会社に発注しており、現場事務所はテレビから何から何まで、全部プレハブ屋さんにお願いして、私たちは身体ひとつ現場に行けば全部揃うようになっています。こうして建設業界は、高度成長とバブルを経てほとんどが外注化されるようになり、自分のところの得意な分野を持ち得なくなってしまったのです。

 たとえば、秋田県のAクラスのトップ企業では、自分が特化する基礎工事すらも下請に出していて、自らは何もできない。恐らく提案する能力も乏しく、設計図を書いても施工図は外注、墨出しという仕事が現場で必要ですが、これも外注で出す。これが今日の建設業界の実態だろうと思います。建設産業の弱体化を象徴しているようです。やはり建設業本来の体質に立ち返らなければいけないのではないかと思います。そうでなければ、業界そのものが衰退し、存続自体が非常に難しくなってしまうのではないかと危惧するのです。

 現在の状況では、建設業は、いわばコンサルティング会社のような位置になっています。建設業ではなくマネジメントしているのです。実際に現場では労務から資材、工期、その他いろいろなものを全部マネジメントしています。ある意味で、それはすでにCM的な形態になっているとも言えるかもしれません。ただ、決定的に違うのは、先ほど触れたように、発注者の立場に立っているのではなくて、企業の利益を守るという立場にあることです。

 では、こうしたマネジメントだけで、フィーを稼げばいいのかどうかという疑問が残ります。従来のようにフィーを30〜40%も取るような状態でいいのか非常に疑問です。ちなみに私たちのCM方式の場合には、大体5%ぐらいのフィーです。

 果たして建設業というのは、今後、特化の道を選ぶのか、またはフィービジネスに徹していくのか、その選択を含めて大きな曲がり角にあるのではないかと思います。日本市場に海外のゼネコンが参入するというのは考えにくく、参入するならばほとんどがフィービジネス形態だろうと思います。日本のゼネコンも、たとえばスーパーゼネコンなどではCM事業本部を立ち上げたり、CM部を持ってやっていますが、今後どのような方向に進むのか、興味を持っています。対して、地方のゼネコンは、特化の方向に進むのではないかと思います。

 100%外注化した産業というのは、もう産業ではないし、消費者かもしれません。したがって私は本来の建設業に返るべきであると考えています。そうした中で、ゼネコンはゼネコンとして果たす役割があると思います。

 今後、CM方式が社会に認知されて、制度化されてきた段階では、恐らくCMのパターンができてくると思います。同じCMの中でも、今のゼネコンを活用した方法、それからアットリスクCMもありますし、いろいろなパターンがあると思います。ただ、現在のように業界に対する社会の目、信用、信頼という点で疑問符が付されているような状況を考えると、やはり当面は純粋なCMを続け、認知された段階でいろいろな活用型を考えていく、これがよりベターな方法ではないでしょうか。

 そのことを発注者の側に立って言うならば、いままでは建築といえば一括発注しか考えられなかったところから、これからはいろいろな選択肢から選べるということです。一括のほうがいいという方もいらっしゃるでしょうし、分離発注で個々の業者も契約の段階からすべてわかったほうがいいという方もいると思います。発注者にとって、発注の多様化というのは、大きなメリットになってくると思います。